お菓子?悪戯?さぁどっち?
「Trick or treat!!」
「・・・は?」
サディケルのいきなりの叫びに、間の抜けた声で返したのはミカエル。
今フィーナルにはこの二人しかいない。
他の賢者はそれぞれ出かけている。
そしてここは、8階にある上官四人の憩いの場。
「何だよ、いきなり・・・」
ミカエルは読んでいた本から不機嫌そうに視線を上げる。
不機嫌の理由は、恐らくハニエルが居ないからだろう。
「トリック・オア・トリート!!」
そんなミカエルになおも同じ事を聞かせる。
「だから何・・・」
「日本語訳してくださいよー」
ミカエルは縋り付くように抱きつくサディケルを気にも留めずに本に集中する。
そして事も無げにサラリと言う。
「“お菓子をねだりながら近所を回ること”。Yho●!協力のもと」
「え!?お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!!じゃないんですか!?」
「あー、そう言う事」
ミカエルは面倒臭そうに眉を寄せながらサディケルを見る。
見られたサディケルは瞳をウルウルさせている。
「要するに、この一年に一度のイベントに参加したいんだろ?」
その一言にサディケルは大声を出す。
「そうなんですよ!!ボクだって他の子みたいに近所を回ってお菓子が欲しいんですよ!!
なのに今日は皆居ないし、頼れるのはミカエル様だけなんですよ!!」
ボクだって他の子と同じ事がしたい年頃なんですよ!!、と。
その言葉がほぼ無人のフィーナルに響いた。
サディケルの必死の叫びに耳を塞いでいたミカエルが呟く。
「・・・うぜぇ・・・」
街には沢山のジャック・オ・ランタン。
人々は魔女など、色々な格好をしている。
ここはフィーナルからかなり離れた田舎の町。
結局連れてこられたミカエルは盛大なため息をついた。
「面倒くせぇ・・・」
サディケルはしっかりミカエルの左手を掴んでいる。
「ミカエル様、物事は経験ですよ」
「何か違わねぇ・・・?」
呆れたミカエルが視線を下げると、サディケルはもう、遠くの方を見ていた。
そこでは大人が子供にお菓子をあげていた。
子供たちは皆嬉しそうな顔をして、自分の袋にお菓子を入れている。
「・・・サディケル、行ってこいよ」
「え・・・、いいんですか?」
「元々そのために来たんだろ?俺はその辺ブラブラしてっから、行けよ」
「・・・はい!」
サディケルは子供のように笑い走っていった。
その姿を見て、ミカエルは一人呟いた。
「大人だと思ってたが・・・、まだまだガキって事か」
しばらくサディケルが走って行った方を見ていたミカエルだったが、
酒場を見つけ、歩き出した。
が。
「・・・?」
くいくい、と、ズボンが引っ張られた。
何だと思って下を見ると、いつの間にか数人の子供に囲まれていた。
『Trick or treat!!』
複数の声が同時に同じ言葉を響かせる。
「マジかよ・・・」
サディケルは先ほど見たところに駆けて来た。
しかし、そこにはもう誰も居ない。
「居ないや・・・」
大人は数人居るが、子供が居ない。
知り合いでもない大人に声を掛けていいのかと、今更悩み始める。
本当は子供に混じってもらおうと思っていたので、
自分から声を掛ける事を考えていなかった。
どうしようかと悩んでいると、一人の女性が声を掛けてきた。
「あらあらどうしたの?他の子たちと行かないのかしら?」
「えっと・・・あの・・・」
どう答えたら良いのかと迷っていると、男性が声を掛けてきた。
「見かけない子だね」
一瞬ドキッとした。
こんな所で十賢者だとバレたらどうしようか。
一緒に来ているミカエルにまで迷惑がかかってしまう。
「まぁいいじゃない。お菓子いるでしょう?」
「え、良いんですか?・・・ボク・・・」
「いいのよ、今日は子供が主役なんだから」
そういって女性はお菓子をくれた。
男性も持っていたお菓子をサディケルに渡す。
「さ、楽しみなさい。大人から沢山お菓子を貰ったもの勝ちだからね」
お菓子を受け取り、サディケルは笑顔で返す。
「ありがとうございます!!」
「Trick or treat!!」
そういって大人からお菓子を貰うのにもなれてきた頃。
沢山の子供が群がっている所が見えた。
何だと思ってサディケルが近づいていくと、そこにいたのはミカエルだった。
「な、何しているんですか?」
子供たちに押し潰されそうになっているミカエルに声を掛けるが、
返ってきたのは苦しそうな呻き声だった。
「ねぇ、君たち、何してるの?」
ミカエルの上にのっている子供の一人が口を開いた。
「このお兄さん、お菓子持ってないんだよ。だから皆で悪戯してるんだ」
「君もやろうよ」
「そうそう、今日お菓子持っていないなんて許すまじー」
サディケルは再度、押し潰されてしまったミカエルに声を掛けた。
「・・・無用心ですね」
すると今度はくぐもった呻き声・・・もとい、声が返ってきた。
「うるせぇ、このガキ共何とかしろ!ってぇな、耳引っ張るンじゃねぇよ!」
サディケルはくすっと笑ってミカエルの上にのった。
「ぐぇっ・・・何しやがんだよっ・・・」
「お菓子持っていない人は悪戯される運命なんですよ〜?」
「知るかよっ!つーか乗ってんじゃねぇよ!!」
抵抗を続けるミカエルを見て、サディケルはニヤリと笑う。
その顔を見てミカエルは自分に起こるであろう、未来を想像した。
「皆ー、このお兄さんお菓子持ってないんだってー」
「っっサディケルー!!!!」
街にはお菓子の匂いと毎年同じ風景。
しかし今年はいつもの年よりも少し賑やか。
笑い声の中心には見慣れない男の子がいた。
ここまでお付き合いくださり、有難う御座いました。
ま、間に合った・・・。
ここからは本当に言い訳です。 後書きという名の言い訳 .
当日に上げるなんて、最悪ですね・・・。
取り敢えず、ハロウィンの期間中、と言っても今日だけですが、フリー配布です。
こんなヘボ小説でも良いというお方は持って行って下さい。
2006.10/30
何か、私が書くとサディケルが腹黒くない気が・・・。
素直なお子様になっている……。
ミカエルの前では素直なんです、設定上。
しかし、ミカエルの前とか言ってますけど、比較する物がないので何とも言えませんね。
そして結局イラストは間に合わず・・・。
うわぁぁぁぁああああん!!
この計画性の無さをどうにかして下さいー!!!