世界を変えられるのなら
それは私が望んだこと
 

 

 

盲目

 

 

 

 

薄暗い研究所の一室に嗚咽が響いていた。
研究所の外は多くの兵士がいて、中に入るための手立てを講じている。
そんな中    そこだけは世界から切り離されたように静かだった。

 

沢山のデータを映し出すモニターの前で、一人の研究者が崩れ落ちた様に床に伏せ、泣いていた。
 「ぅっ…、私は…っ」

 

拳を握り、涙を拭うことすらせず、彼は泣いていた。
相変わらず、モニターは文字を映し出す。
その中でもひときは大きく、赤く表示された文字があった。
     『エタニティーフィールド作動』

 

彼の行った事。
それは『暴走した十賢者の処理』。

 

彼は泣き続ける。

 

 

 

 

フィリアが、死んだ。
それは、私を狂わせるには充分で。
充分すぎて。
 

 

 

 

 

 

 「何故だっ!!?」
あの時、銀髪の彼は叫んだ。

 

 

必死に。
仲間を守るために。

今思えば、彼は何時からあんなに表情が豊かになったのだろうか?
自らが産み出した者達さえも、その時の私の目には映ってはいなかった。

 

 

 

 「博士…」
青い髪の彼は、私を哀れむ様に見ていた。

 

 

彼は何時から他者に感情を見せるようになっていただろうか?
小さな、小さすぎるけれど、とても幸せな変化すらも見逃していた。

他の賢者は呆然と、ある者は激情を孕んだ目で、私を捉えていた。

 

 

 「私は…」

優しく、どんな者達よりも、人間らしい彼らを、人間ではなくした。

許されないことだった。
だから私は、せめて私だけは、彼らを人間として見てあげたいと。
 

 

 

    そう、思ったのに。
 

 

 

 

 

 

 

「私はっ…お前達を…」

エタニティーフィールドという、永遠の牢獄へ。
出ることも、動くことすら封じられ。
仲間の無事も、存在すらも確認できずに。

 

 

彼らはこれから、永遠の時間をそこで過ごす。
私がそうさせてしまった。  

 

 

 

血の様に赤い髪の彼が言ったことが、頭を離れない。
 「結局、生きるも死ぬも、何一つ      思い通りには…ならない、のか」
自らを嘲る様に、悲しげに笑っていた。

 

 

 

研究所内が騒がしくなった。
兵士の声がする。
外の音がどこか現実味をなくしている様に、ランティスには聞こえた。

 

 

 
 

あぁ、これが。
これが、お前達に言う最後の言葉となるだろう。

 「ご免よ、私の子供達     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     後書きという名の言い訳     .

ここまでお付き合いくださり、有難う御座いました。

 

ランティス、いい人だ。
いつも酷く書いているのですが、ランティスは十賢者の味方だと思います。
彼らの第二の父親です。

シリアスしか書けない俺を許してください(無理だ)