3.神曲

 

 

 

 

研究所で創られて数日が過ぎた。
私の部下は既に皆完成していたが、私だけ未だ不安定な状況にあった。
担当の精神科医の話では、研究所内部の職員や、部下の態度により、
重度のストレスを感じているせいらしい。自覚がない訳ではない。
研究職員とすれ違うと、明らかにこちらを避けているのが分かる。

部下で言えば、ルシフェルがそれに当たる。
こちらを避けている訳ではない。彼の場合は全くの逆なのだ。
一応指示には従うものの、こちらを見る瞳には殺意にも似たものがある。

何が気に食わないのか。
恐らくは、そんなことが積み重なってストレスとなっているのだろう。

 

さらに数日が過ぎた。
私の状況は良くなっている。というのも、
「ガブリエル、おはよう。調子はどう?」
「ああ、この頃はとてもいいよ」
フィリア。ランティス博士の娘である彼女の存在のお陰だ。
「それは良かった!最近は発作もなくていい状態だと、お父様も言っていたわ」

彼女は他の者と違い、私を避けたり、特別扱いをしない。
普通の人として扱ってくれる。私は自然と彼女と共にいるようになった。

 

 

しかし、そんな些細な平和は脆く崩れ去った。

 

 

 

「フィリア様が反逆者のテロによってお亡くなりになりました」

サディケルにより伝えられたこの現実に耐えきれず、博士は壊れてしまった。
心が壊れた博士は、私にフィリアと博士自身の思考ルーチンを組み込んで言った。
「フィリアのいない世界など要らない。壊してしまえ、何もかもを」

 

その言葉の後、私は弾かれたかのように外に飛び出していた。
何人もの兵士を殺し、街を平原にしていった。
行為を繰り返した。何度も何度も。それが永遠に続くかのように。

 
破壊し尽くして、新たなターゲットを探そうとした時、聞こえたのはなくしたはずの声。
『やめて、ガブリエル。貴方にそんなことはしてほしくないの・・・・』

フィリアだった。なぜ、彼女の声が・・・・?

『お願い、もうやめて・・・・。』
彼女の声は、私を狂わせる。頭が痛い。額が焼け付くように熱い。
「フィリア、私はもう、戻れないんだ・・・・」
そう言った時、音色が聞こえた。美しくも悲しい、神の曲が。

 
「この曲を、君に捧げるよ。全てを飲み込む神の曲だ      

 
フィリアの顔が悲しみに歪む。
そんな顔が見たい訳ではないのに。私は笑っていた・・・・。
いや、博士が笑っていた。その時、私は眠りについた。
 

 

 

 

 

     後書きという名の言い訳     .

ここまでお付き合いくださり、有難う御座いました。

 

3.神曲 でした。
これは神曲発生するまでの過程と言いますか、ガブ様とフィリアの関係?
フィリアは皆の精神安定剤だといいと思います。
勿論ランティスはフィリアのためだけに仕事をしています。