2.赤と白
「あ〜、重いッ!!!」
大声を上げたのは荷物持ちに連れてこられたミカエル。
「そんな量で根を上げるなんて情けない」
喚くミカエルを横目に、他の店に目をやっているのはガブリエル。
彼らは十賢者の食料を買い出しに来ていた。
「大体、何で俺なんだよ。力だったら俺よりアンタやザフィケルの方があるだろ!」
文句を言い、盛大にため息を付く。
「君はそんなに私と出歩くのが嫌なのか?」
彼のそんな態度に、内心ちょっと傷ついたのは
「ハニエルとは喜んで出かけるクセに」
ハニエルという存在。別にミカエルのことが特別好きな訳ではない。
ただ同じ仲間として、ここまで違いがあるのは悲しい。
ガブリエルの言葉の意味を知ってか知らずか、ミカエルは駄々をこねる。
「もう買うモンは買っただろ?さっさと帰ろーぜ」
これ以上何を言っても伝わらない。ミカエルは年の割に子供のなだ。
自分中心に物事が回る。気に食わなければ駄々をこねることも珍しくない。
「解ったよ、そろそろ帰ろうか ん?」
諦めて帰ろうとした時、ふと目に入ったのは一軒の花屋。
その軒先には色とりどりに咲き誇る美しい花々。美しい花に目を奪われ、見とれる。
「何だ って、花屋?・・・・」
ガブリエルの視線を追って、その先にあるものを見る。
少し間を置いて歩き出すミカエル。花に見とれていたガブリエルは急いで追いかける。
店の前に立ったミカエルは、迷うことなく一輪の白百合を手に取る。
「ほら」
手渡され、受け取る。
「アンタにはやっぱり真っ白い百合が似合うな」
「え?・・・・ありがとう」
意外な言葉だったが、褒められればつい顔がほころぶ。
「これ、買ってくか?」
微笑むガブリエルを見たミカエルが言った。余程嬉しそうに見えたのだろう。
「そうだな、じゃあ買っていこうか。君は?」
「俺?俺は花なんて柄じゃねぇだろ」
そんなにヤワな見た目はしていない、とでも言いたそうな口調。
「じゃ、私が勝手に買うよ?すみません、この白百合と、そこの紅い薔薇を。
あ、薔薇はできれば棘の付いているものがいいのだけれど」
代金と引き替えに紅薔薇を受け取る。
「俺に薔薇は似合わないだろ。せめてルシフェルにしろよ。つーか何で棘付き?」
眉を寄せて ありえねー、というミカエルに紅い薔薇を押しつける。
受け取るミカエルはどこか不機嫌そうで。そんな子供のような仕草に苦笑する。
「赤は赤でも、ルシフェルにはピンクに近い明るい赤がよく映えるんだよ。
棘の無い赤い薔薇。君には攻撃的で血のような花。棘の付いた深紅の薔薇がよく似合うよ」
一度区切って、
君は誰にも屈しない孤高の戦士だもの。
囁いて、歩き出す。
呆気にとられていたミカエルは、少し遅れて歩き出した。
その顔はどこか大人びた笑みを浮かべていた。
読んでくださり、有難う御座いました。
「2.赤と白」でした。 後書きという名の言い訳 .
お解りでしょうが、赤=薔薇、白=白百合です。
ガブリエルといえば、象徴の白百合。
ミカエルは勝手に薔薇だと判断(オイ)
ルシフェルの話が出てきたのは、皆様が薔薇=ルシフェル、とお考えかな、と思ったもので。
我が家のガブ様は大人しい方です。
部下にまで「君」って…;
ミカエルもそれに応えているのか、「あんた」と呼ぶのはガブに対してだけです。