<Angelus Zimmer>



「はうぅ……今日もハードだったッスねぇ;」


普段から仕事が忙しいのだが、久々に缶詰状態が続いていた。
ようやく解放されたアッシュは、ユーリとスマイルを置いて
一足先に城に戻ることになったのだ。


『アアアァ〜ッシュぅウ!!』
『もう、終わったの…カイ?;』
『あんたら化け物より怖いッスううう!!!』



アッシュ、君も妖怪だよ。



地獄絵図の中から脱出し、とりあえず城に帰る前に
全然寄っていない自分の自宅へとアッシュは行ってみることにした。







―――――…………。



ガチャリと音をたて、アッシュの自宅。
Deuilに入るまで一人暮らしをしていた、
兄、シュリがアッシュへと強引にプレゼントした
高級マンションだが、仕事が忙しくなってからは
掃除もろくにできず、埃が積もり元の面影もない



………筈だった。



「Yo〜♪おかえりアッシュ!」
「…………何で此処に…鍵は?!」
「おっとっと、忘れてもらっちゃ困るぜアッシュ、俺様は、神だぜ?」
「あ〜、はいはいそうでしたねぇ」
「冷たいねぇ、まあ缶詰だったししかたねぇな」
「で、何の用なんスか?」
「Wow.それだよ。待ってたんだぜ、その間に掃除しといた」
「!……え、ああ。有難う御座います」


独特の笑みを浮かべ手を二三度振り
「気にすんな」と一言添えるMZD。


「んで、用件なんだが、明日はオフの筈だ」
「はい、やっと一山超えたって感じですから」
「そうか、ならアッシュ。明日のお前を………」



…………俺様に寄越せ♪


「強引にも、程があるっす!!」
「まあまあ!カッカしないでアッシュ君!」
「そうだよ!パパパヤ〜ってはっちゃけポップン大作戦だよ!」
「そっスね!ミミニャミさんの言うとおり!はっちゃけポップン大作戦……なんて出来るかァ!」
「暴れないで!今衣装選んでるんだから!」
「メイクもばっちりきめようねぇ♪」
「何なんスか、何か企んでるッスね!!」


MZDの言葉と共にクローゼットに忍んでいたミミニャミに
連れられて、アッシュは早速支度に取り掛かられていた。
勿論睡眠時間は与えられたが、ほぼ仮眠と言ってもいいだろう。
とにかく早朝からハイテンションの二人に、
アッシュは完全に目が覚めてしまっていたのだ。


「Good morning Ash♪」
「…………M?」
「何だよ?眠いのか?」
「そうじゃなくて、何か、雰囲気が」


アッシュがマンションから出ると、目前に黒のスポーツカー。
そして運転席には身長の伸びているMZDの姿が。
服装はいつもどおりなのだが、どこか纏う雰囲気が違う。


「普段の身長だと何かと不便なんでな!」
「………//」
「ん?どったよ?……さては俺様に惚れたな!」
「んな?!っなわけ……ねぇッス…//」
「ははっ、乗れよ。」


MZDはふわりと車から降り、助手席のドアを開けて手を胸に当てた。


「??」
「どうぞ、今日のお姫様♪」
「だ、れがお姫様なんすか!!//」


照れた顔で助手席に乗り込むアッシュに
にやりと笑みを浮かべるMZD。
視線はマンション入り口のミミニャミに。
二人は手をふり見送っている。


アッシュはMZDの言葉の一つ一つに
新鮮な反応を返し、そのたびにMは嬉しそうに笑う。
二人はごく普通、女性なら誰でも夢見るような
ロマンチックなデートという時間を過ごしていた。
今のところアッシュと神は恋仲ではない。
だが何故か周りからは黄色い歓声と祝福の声が
神にのみ密かに聞こえていた。
様々な店を回り、時に公園で休みアイスを食べる。


「も〜らいっと♪」
「はわっ?!もお!自分の食べるッス!//」
「間接キス♪なんてな!」
「…………馬鹿〜!!!///」


神と会うことは勿論あったし、
ソロで仕事を競演することもあった。
しかし、二人きりで会うことなどほとんどなく、
アッシュは神の様子を見ていて、
少しずつ心境が揺れ動いているということに。
アッシュは鈍さのあまり自覚していなかった。


それからアッシュは、神に高級ブティックに連れられた。


アッシュは唖然とただ店員に何かを話し、
持ってこられる服を着替えるのみだった。


「え、M……オレ、こんなの似合わないッスよ!//」
「世界のヴィジュアルバンドメンが何を言ってんだよ。お姉さん、こんなのは?」
「畏まりました!」
「MZD様、これなんて如何でしょう?お連れ様にお似合いかと?」
「ん〜どれよ?oh〜!いいねぇ、じゃあ色は黒に変えろ!」
「はい!お待ち下さい!」
「………M,店員さん凄い待遇ッスね?」
「そりゃあ、俺様ここのBIPだから♪」
「びっ………?!」
「アッシュ様、こちらをお召し下さいまし!」


散々着せ替えごっこの如く服を変えて。
アッシュは渋々目に付いた服を選び出した。
MZDが持ってこさせた服が後ろで山積みにされているのは、
疲労感から珍しく無視を決め込んだ。


「でもオレ、買えないッスよ?;」
「何言ってんだよ。俺様が買ってやるんだよ」
「はっ?!わ、悪いッスよ!」
「いいんだって。お〜いっ!これもらうぜ?」
「有難う御座います!またいつでもお越し下さい♪」
「えぇ……あのっM!!」
「そのままでな!ミミニャミが選んだ服でもいいんだが、一応な。」


いつのまにか服をスーツに変えた神は、アッシュの手をとり車へと向かった。
店員は微笑ましそうにそれを見送り、山になった服を元に戻し始めたのだった。







――――………。





数分後、神に連れられたのはやはりと言っていいほどの、高級レストランだった。
最上階の展望レストランで、最近噂になっているデートスポットだ。
それ故に予約は滅多に取れないというもう一つの噂もあった。
アッシュは本当に今日は驚かされすぎで、これは何かの番組のどっきりなのでは
ないかと疑いの念も出始めていた。


「あ、どっきりとかそんなオチじゃねえから」
「………(読心術?!)」
「ははっ、そんな顔してっからさ。」
「顔に書いてあるってやつッスか……//」
「そそ、その可愛らしいお顔にな♪」
「今日は何回可愛いっていったと……;//」
「12―――」
「言わなくていいッス!!!//」
「それは残念だ。」
「それより、MZD。今日、お客さんいないッスね……?」
「そりゃあそうだろうよ!」
「??…………まさか;。」
「おや、鈍いわんわんでも気づいたか!そ、貸切♪」
「あんた………っ」





馬鹿ッスか?!!


「馬鹿?そだな。馬鹿だよなァ」
「開き直るな!!なんで、こんなこと好きな人にすれば!」
「好きな人に、ね」
「好きな……人に……?………っ、はは。まさか…//」


アッシュは途端に耳まで赤くし、硬直してしまった。
まっすぐに、笑みは浮かべているが目は真剣なMZDに
アッシュはふいと視線をそらし、誤魔化すようにワインを飲んだ。
濃厚な赤ワインを、酒に強くもないのに一気に飲む。
すると、唇になにか触れる感触がした。
アッシュはグラスを離すと、カランとガラスに金属の当たる音がする。


「…………これ。」
「特注、お前のその綺麗な瞳に似せて。贈るぜ」
「ピアスの片方、ッスか?」
「おう!指輪よか繋がってる気がすんだろ。」
「………っ、MZD」
「……わかったか?俺様の気持ち」
「あんた、………どこまでオレを狂わせるんスか!!?///」
「アッシュ?……お前、泣いて?」


アッシュはがたりと椅子を乱暴に鳴らし立ち、
息を荒げてMZDを睨んでいた。
しかし、それは濡れた瞳と真っ赤な顔で威圧感をなくしている。


「朝からオレを連れ出して色々なとこにドライブ!それにショッピングに夜景に食事!!」
「………おい、アッシュ。」
「いつからか忘れたけど!心臓ドキドキになるし熱は出るし!!Mが見れなくなるし!!///」
「!!」
「そんでこれは風邪による熱だって思おうとしてたら、店貸しきるしおまけに、ピアスまで!!」
「……………。」
「オレ、壊れちまったッスよ……駄目、なのに……ッ!!男の人と……ッ//;」
「何でだよ?いいんだよ。想っても、愛し合ってもいいんだぜ。」


MZDはアッシュの傍により、アッシュの髪を優しく撫でた。
その姿はもとの姿に戻っているので、浮いた状態をとっているのだが。


「俺様も神だ。神は等しく愛を捧ぐ。……ま、普通の神はだが」
「何で……MZD、オレよりもっといい人とか」
「惚れたんだ、お前の音にな。勿論ドラムの音も、声って音もだが。一番は………」




お前の中の音にだ。



「想われろ、アッシュ。お前が今想ってる思いを、消すな。」
「……………MZD。//」
「頼む……。」
「………今日の演出、ミサキさん達に聞きましたね?」
「う……;」
「それから最後のワインのやつ、ドラマでやって――」
「そ、そうだよ!悪いか?!初めてだったんだよ!!//;」
「初めて?」
「お前が、結構ロマンチストって聞いて……必死に計画練ったんだ!」
「……誰にきいたんスか?!//」
「とにかく!俺様はお前を離す気はねぇから!!」
「…………しょうがないッスね。掴まってあげるッスよ//」
「っ……アッシュ!//」


MZDはアッシュの言葉に目を丸くし、しかし直ぐにアッシュを抱きしめた。
アッシュは驚き床に座り込む。


「M!!離して!//」
「嫌だね!死んでもはなさねえ!!」


一人の人狼は、一人の音の神に魅入られ。
一人の神は、一人の人狼に魅入られたのであった。




     †感謝・感激・雨霰†     .

pop'nサイト・『風車』を管理なさっている柘榴 様から頂きました。

 

キリ番を踏んでリクした神アシュです。
素敵過ぎて何も言えない。。
神アシュばんざーい、柘榴 様ばんざーいって感じですよ!
サイトはココですよ。
柘榴 様ありがとうございました!